「年金はいくらもらえるの?」は多くの人が気になる疑問です。老後の公的年金は「老齢基礎年金」と「老齢厚生年金」の2つから成り立っており、それぞれ計算方法が異なります。自営業者とサラリーマンで受取額が大きく違うのは、この2階建て構造が理由です。この記事では、年金制度の仕組みを順を追って解説します。
2階建て年金の構造
日本の公的年金は「2階建て」に例えられます。1階が国民年金(老齢基礎年金)、2階が厚生年金(老齢厚生年金)です。20歳以上60歳未満のすべての日本国民は国民年金に加入し、さらに会社員・公務員は厚生年金にも加入します。自営業者・フリーランスは1階のみ、会社員は1階+2階の両方の年金を受け取れます。
→ 40年加入で満額:847,300円/年(2026年度)
→ 加入月数に比例して減額される(未納・免除期間は不利)
2階:老齢厚生年金(厚生年金)
→ 在職中の報酬・加入期間に比例
→ 平均的な会社員で年間60〜80万円程度の上乗せ
老齢基礎年金の計算方法
老齢基礎年金の受給額は、保険料を納めた期間(保険料納付済期間)によって決まります。20歳から60歳までの40年間(480ヶ月)すべて納めると満額(2026年度:847,300円/年)を受け取れます。未納期間や免除期間があると、その分が減額されます。
保険料の全額免除を受けた期間は2分の1として計算されます(2009年4月以降)。つまり、免除を受けていても将来の年金がゼロになるわけではなく、半分は保障されます。これは国が国庫負担として半額を補填しているためです。このため、経済的に苦しい時期は免除申請をすることが、未納のまま放置するよりも賢明な選択です。
老齢厚生年金の計算方法
老齢厚生年金は「報酬比例部分」と「経過的加算」から構成されます。報酬比例部分は、現役時代の「標準報酬月額」と「標準賞与額」の平均に加入月数を掛けて計算します(乗率は生年月日により異なる)。給与が高いほど、また勤続年数が長いほど、受け取れる老齢厚生年金は多くなります。
加入月数が300月(25年)に満たない場合でも、みなし300月として計算されます。これは遺族厚生年金の算定でも同様のルールが適用されます。社労士試験では、この「300月みなし」が頻出の論点です。
繰上げ・繰下げ受給
老齢年金の受給開始時期は65歳が原則ですが、60〜64歳に早める「繰上げ受給」と、66〜75歳に遅らせる「繰下げ受給」が選択できます。繰上げすると1ヶ月ごとに0.4%(2022年4月以降の生年月日の方)減額され、繰下げすると1ヶ月ごとに0.7%増額されます。
| 選択 | 増減率 | 注意点 |
|---|---|---|
| 65歳(原則) | 増減なし | — |
| 60歳に繰上げ | 最大24%減額 | 一生涯減額が続く・取消不可 |
| 75歳に繰下げ | 最大84%増額 | 長生きするほど有利 |
繰上げ受給は一度決めると取り消しができません。また、障害年金の受給権が発生した場合に選択肢が制限されることもあるため、慎重な判断が必要です。
マクロ経済スライドとは
少子高齢化が進む日本では、将来世代の保険料負担が増えすぎないよう、年金額の伸びを抑制する「マクロ経済スライド」という仕組みが2004年に導入されました。これは物価・賃金が上がっても、被保険者数の減少率と平均余命の伸びを反映したスライド調整率分だけ年金額の増加を抑える制度です。社労士試験では、マクロ経済スライドの発動条件(名目額は下げない)とキャリーオーバーの仕組みが問われます。
試験対策ポイント
- 老齢基礎年金:国民年金保険料の納付済期間が10年以上で受給権発生。40年満額で年約82万円(2024年度)
- 老齢厚生年金:厚生年金の被保険者期間に基づく報酬比例部分。60歳台前半は特別支給の老齢厚生年金
- 繰上げ・繰下げ:1ヶ月繰上げで0.4%減(最大24%減)、繰下げで0.7%増(最大84%増・75歳)
- マクロ経済スライド:物価・賃金の伸び率から調整率を差し引いて年金額を調整する仕組み
- 第3号被保険者:20〜60歳の厚生年金加入者の配偶者で年収130万円未満の者
老後の年金が気になるあなたへ
老齢年金の仕組みと自分の年金額の確認方法を理解しましょう。
✅ 「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」で将来の年金額を確認できます
日本年金機構は毎年誕生月に「ねんきん定期便」を送付し、これまでの加入実績と見込み年金額を通知しています。 「ねんきんネット」(マイナポータル連携可)では最新の年金記録と試算ができます。 加入漏れや記録の誤りに気づいたら年金事務所に相談してください。
✅ 60歳以降の繰下げ受給で年金額を増やすことができます
老齢年金は65歳より遅く受け取り始めること(繰下げ)により、 1ヶ月遅らせるごとに0.7%増額されます(最大75歳まで、最大84%増)。 健康状態・他の収入源・寿命見通し等を総合的に考慮して、年金専門家やFPに相談しながら判断することをお勧めします。
✅ 未納期間がある方も追納・任意加入で将来の年金額を増やせます
過去10年以内の未納・免除期間は追納(保険料をさかのぼって納付)できます。 また60歳以降も65歳まで任意加入して保険料を納めることで年金額を増やすことができます。 保険料の追納・任意加入の手続きは年金事務所で行えます。