概要
経団連「HR部門におけるAI等の活用」報告書 解説
経団連が2024年に公表したHR領域でのAI活用ガイドラインは、採用・評価・配置等の人事領域でのAI利用における公正性・透明性・プライバシー保護の原則を示しています。採用選考でのAI判断は人間の最終確認が必要とされ、差別的なアルゴリズムの排除が求められます。社労士が実務で直面する最新論点の一つです。
出典:一般社団法人 日本経済団体連合会 / 2026年4月14日公表
原文PDF↗
経団連(日本経済団体連合会)が2026年4月に公表した本報告書は、企業のHR部門におけるAI・デジタル技術の活用実態と課題を整理し、経営者・人事担当者に向けた方向性を示したものです。採用・評価・育成・労務管理の各場面でAI活用が加速する中、「AIは人間の意思決定のサポート」という大前提を明確化しています。
HR部門のAI活用
2024年経団連報告書
採用・評価・育成に活用
計算ツール
報告書の概要
| タイトル | HR部門におけるAI等の活用に関する報告書 |
| 発行 | 一般社団法人 日本経済団体連合会(経団連) |
| 公表日 | 2026年4月14日 |
| 大前提 | 「HR部門におけるAIは、人間の意思決定のサポート」 |
報告書が示す3つの求められる対応
対応①
安全性・公平性・透明性の確保
- 採用・評価AIが特定属性(性別・年齢・国籍等)を不当に考慮しないよう設計
- アルゴリズムの根拠を説明できる透明性(説明可能AI)
- 個人情報保護法・労働関係法令との整合性確保
- AIの判断結果を人間が最終確認するプロセスの維持
対応②
戦略的推進体制の構築
- 経営トップのコミットメントとガバナンス整備
- HR部門・IT部門・法務部門の連携体制
- AI活用のロードマップ策定とKPI設定
- 外部ベンダー・AI事業者との適切な契約・管理
対応③
現場に根付かせるための運用・定着の仕組みづくり
- 現場管理職・従業員へのAIリテラシー教育
- AI活用に対する従業員の不安・懸念の丁寧な解消
- 利用状況のモニタリングと継続的な改善サイクル
- 労使の合意形成(導入前の説明・協議)
HR業務におけるAI活用が想定される主な場面
| 業務領域 | AI活用例 | 留意点 |
|---|---|---|
| 採用 | 書類選考の自動スクリーニング、面接評価補助、採用予測 | 差別的選考のリスク。均等法・労働施策総合推進法との整合 |
| 人事評価 | 360度評価の集計・分析、パフォーマンス予測、昇格候補抽出 | 評価基準の透明性確保。不服申立プロセスの維持 |
| 育成・研修 | 個別学習パス提案、スキルギャップ分析、離職予測と早期介入 | 個人情報の適正利用、プロファイリングの開示 |
| 勤怠・労務管理 | 勤怠データの異常検知(長時間労働・無断欠勤)、シフト最適化 | 労働基準法・安全配慮義務との整合 |
| 給与・手続き | 給与計算補助、社会保険手続きの自動化、Q&Aチャットボット | 社労士法・税理士法との業際問題に注意 |
掲載された企業事例(8社)
トランスコスモス
JCB
中外製薬
テルモ
竹中工務店
デンソー
日本IBM
ウィルオブ・ワーク
※各社の詳細事例は原文PDFに掲載
社労士・人事担当者への影響と考察
AIが担える業務と、人間が担い続ける業務は明確に分かれる
| AIに代替されやすい業務 | 人間の専門性が不可欠な業務 |
|---|---|
|
|
社労士試験・実務受験者へのメッセージ:
AIが普及するほど、労働法・社会保険法の正確な知識を持った専門家の需要は高まります。 AIが提示した答えを検証し、法的リスクを見極める力こそが今後の差別化要素です。
AIが普及するほど、労働法・社会保険法の正確な知識を持った専門家の需要は高まります。 AIが提示した答えを検証し、法的リスクを見極める力こそが今後の差別化要素です。
採用AI・評価AIに関連する主な法律
| 法律 | AI活用との関係 |
|---|---|
| 個人情報保護法 | 採用応募者・従業員のデータ取得・利用目的の明示・第三者提供の制限 |
| 男女雇用機会均等法 | 性別を理由とした採用・昇進差別の禁止。AIによる間接差別も対象 |
| 労働施策総合推進法 | 年齢差別禁止・ハラスメント対策義務。採用基準の透明性 |
| 労働基準法 | AI勤怠管理・長時間労働検知ツールの導入に際し、労働時間管理義務は使用者に残る |
試験対策
試験対策ポイント
- AI・HR技術の活用:採用・評価・配置・育成にAIを活用する企業が増加
- 個人情報保護法:従業員データの取扱いには利用目的の明示・同意取得が必要
- 均等法・パート有期法との関係:AIによる差別的評価は均等法等違反となる可能性
- 労働基準法との関係:AI管理による長時間労働の把握・是正が事業者の義務
- 経団連報告書の位置づけ:法的義務ではなく指針・ガイドラインとして活用
当事者視点
AI・デジタルツールで管理されている職場のあなたへ
AIを活用した職場管理における労働者の権利を確認しましょう。
✅ AIによる監視・管理の目的と範囲について会社に説明を求めることができます
PCの操作ログ・位置情報・行動データ等を業務管理に使う場合、 個人情報保護法の観点から利用目的の明示と適切な同意取得が必要です。 どのようなデータが収集・利用されているかを会社に照会する権利があります。
✅ AIによる長時間労働の把握結果を就業改善に活かす権利があります
AIや勤怠管理システムで長時間労働が把握されている場合、 事業者はその情報を基に産業医面談や業務量調整等の対策を講じる義務があります。 月80時間超の残業が記録されているにも関わらず放置されている場合は、 産業医または労働基準監督署に申告することができます。
✅ AI採用ツールが公正に運用されているかを確認する権利があります
採用選考にAIを使用する場合も、性別・年齢・出身地等の不当な差別的判断は禁止されています。 採用不合格となった場合でも、その理由についての説明を求めることができます(均等法の観点から)。 不当な差別的扱いが疑われる場合は都道府県労働局に相談してください。
法令
根拠法令
関連ページ